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與那城 side
柾「…木村柾哉です。よろしくお願いします。」
児童相談所の所長である、安藤さんと共にやって来たのは、中学二年生の男の子だった。
施設を設立して半年くらいたった頃の、初めてうちに入所する子だった。
安「中々、慣れないところもあると思うんですが、こちらもサポート致しますし、何卒よろしくお願いいたします。」
丁寧な挨拶をされて、簡単なバックグラウンドがわかるような紙とかを貰って安藤さんとは別れる。
『ちょっと冷えてきたね、中入ろっか。』
11月のちょっと冷たい風が吹き始めた頃だった。
柾「えっと…荷物って、、」
『あ〜、そこ置いといて!あとで部屋案内するから!』
身長はちょっと高め。当時は少しほっそりしていた。
その後部屋へ案内して、ひとつの部屋を渡す。
彼が荷物を片付けたり、整理してる間にさっき貰った紙に目を通すことにした。
『えっと〜…なになに、うーん………っ』
ちょっと甘く見ていた。
そこに書いてあることは、壮絶すぎて、息をするのを忘れていた。
少し落ち着いたあと、キッチンへ向かった。
柾「荷物の整理、終わりました。」
『了解。ちょっとそこ座って待ってて!』
階段をおりてきた彼に、声をかける。
蓮じゃない人が家にいることがその時はまだ不思議だった。
『楽にしてていいからね〜、』
柾「ぁ、ありがとうございます。」
『お名前、教えて?』
こういうのからコミュニケーションを取っていくことが大切なんだって、いつか教えてもらったことがある。
柾「きむら…木村柾哉です。」
『柾哉ね〜。俺は與那城奨って言います。好きに呼んでね。』
柾「珍しい…」
『でしょ?(笑)』
柾「よなさん…よなさんって呼んでもいいですか?」
『うん、いい。なんか可愛い。(笑) よし!できた〜』
今日は上手くできた気がする。親子丼。
『どうぞ!』
柾「美味しそう…食べていいんですか?」
『ふふん、美味しそうでしょ?どうぞ。』
少し震えた手を合わせて、頂きますと言った後に1口含む。
柾「…ぉいしい、、」
『良かった。(笑) 今まで、俺には図りきれないほど辛い思い、怖い思いしてきたと思う。怖かったね、頑張ったね。これ、親子丼。これから俺と柾哉は親子みたいなものだからね。一緒に頑張ろう。』
柾「…っ」
静かな部屋に柾哉の啜り泣く声だけが響いた。
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作者名:ぽぽまる | 作成日時:2024年3月29日 0時